「身体の持っている知恵」

〜頭で考えるよりも、身体を使って行動につなげる〜
今年は、梅雨入りが例年よりも早いようですね。
新緑が美しいこの時期になると、私は何か新しいことに挑戦したくなります。
最近は、「健康維持のため」に身体を動かすことを意識的にやっており、その一環として、スポーツに挑戦しながら健康状態を診ています。今年に入ってから、スキー、シュノーケリング、SUPなど、様々なことにチャレンジしています。挑戦してみると、自分の身体の使い方について意識させられることが多く、「身体の記憶力」や「間身体性」(注1)という現象学的な概念について考えるようになりました。
注1)
「間身体性」: 人と人とが身体を通して無意識に影響を与え合っている状態のことで、人とひとの間に働いている作用のこと。
この冬は、30年ぶりにスキーをやってみました。滑り始めて、最初の15分ぐらいは身体がスキー板で滑る感覚が思い出せなくて、モタモタしていたのですが、近くを滑る人を観察すると、 ああ、あんな感じで滑ればいいのかとコツをつかむことができ、スキーの感覚を取り戻すことができました。一度、スキーの勘が戻ると身体が自然にいろいろ思い出すことができるものです。どのようにできたのかは、暗黙知なので言葉で表現しにくいですが、一つ言えることは「身体はちゃんと覚えている」ということ。シュノーケリングも同様で、前回海に潜ってから随分と時間が経過していましたが、海に入れば体が自然に動き、フィンやシュノーケルを使いながら、海の中を自由自在に潜っていくことができました。「身体の記憶力」、 これがいわゆる身体の持っている知恵なのかもしれないです。
私は、組織開発のワークショックでよく身体を活用したワークを実施します。不思議なことに、参加された皆さんは頭を使って理解した内容よりも、身体を使って表現した内容をよく記憶されています。また、一緒に実施したワーク内容は、時間が経過しても、身体を動かすことですぐに思い出すことができることを、何度も経験しました。これは、身体の動きと共に、その時に感じたことを一緒に記憶しているのだと言えます。これも、身体の持っている知恵のなせる業なのでしょうか。
久しぶりにスキーをした際に、上手に滑っていた人が近くにいると、その人を観察しながら見よう見まねで滑っているうちに、より早く上達し、30年前のスキーの勘が戻る経験をしました。 スキーで経験したことは、現象学(注2)では「関身体性」と言い、人と人とが身体を通して無意識に影響を与え合っていると言うそうです。私たちは身体を通して他者や環境と関わっており、人とひとの間に働くこの作用は、身体の持つ可能性を拡げてくれるものです。
では、私たちはどのようにして他者や環境から情報やメッセージなどのシグナルを受け取っているのでしょうか。組織開発の中でチャネルという言葉があります。私たちがシグナル(情報やメッセージ)を受け取る際の感覚器官のチャネルには、主に「視覚(見える)、聴覚(聞こえる)、身体感覚(触れられる)、運動・筋感覚(動ける)」があります。私が久しぶりに挑戦したスキーなどのスポーツでは、どうやらこれらが総動員されていたようです。 チャレンジをしてみるからこそ、身体の可能性や人間関係の可能性を改めて感じることができます。皆さんも、身体の持っている知恵を使って眠っている感覚を呼び覚ましてみませんか?
(注1)(注2)(出典)「共に働く意味を問いただす: 職場の現象学入門」 露木 恵美子 著

